B:原始の巨岩 ジェネシスロック
キミは、フォーバッドを知っているかね?高濃度のエーテルが岩石に宿り、自然発生するゴーレムの一種だ。その近縁種は、雪にさえ宿ると伝えられている。
もし月面にエーテルが存在していれば、フォーバッドと似た存在が、月の岩を依り代に発生しているはず。いや、はずなどという言い方はやめよう、必ずいるのだ!こうした存在を、ワタシは「ジェネシスロック」と名付けた。あとは簡単だ、腕利きのグリーナーであるキミが、それを倒して戦利品を持ち帰れば、学会も騒然とすることだろう!
~ギルドシップの手配書より
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ショートショートエオルゼア冒険譚
「ジェネシスというのは「発生」とか「起源」という意味の言葉だ。ふとした自然現象、一番簡単な例を言うと多くのエーテルを含む鉱石が採れる山で土砂崩れがあったとしよう。流された鉱石を多く含む土砂が山の谷を埋める。すると平面的に広範囲に分散していたエーテルを含む鉱石が今度は小さい面積に立体として蓄積される。結果としてどうなるかと言えばその他には高濃度のエーテルを発する谷、という事になる。あくまで分かりやすい一例ではあるが、擁するにそのような自然現象により高濃度のエーテルが観測される地点がこの惑星ハイデリンには多く存在するという事だ。高濃度のエーテルというのは長時間浴びれば生物の生態に変化をもたらしたり、奇形や亜種が発生したり、条件によってはとても危険なものだ。」
そこまで言うと水筒を手に取り、入っていた水を一口のんだ。
「それはさておき、僕はね、宇宙にもエーテルは存在していると考えているのだよ。だが空気と同じように宇宙にはエーテルは存在しないという高名な先生の学説が業界の通説でね、異論を唱える僕は異端者扱いされているんだ。」
シャーレアン大学の助教授だと男は少し自嘲気味な笑みを浮かべて視線を落とした。
「君たちはフォーバットという魔物を知っているか?岩や砂が高濃度のエーテルに晒されてできる自然発生するゴーレムのような魔物だ。時には雪や溶岩がそうなる事もある。何故こんな現象が起こるのか、何が目的なのかは分からない僕はこいつらやこの現象を『ジェネシスロック』と呼んでるんだが、つまり逆を返せばエーテルのないところにこの魔物は存在しない。」
そういうと彼は上目遣いに顔を覗くような仕草をして見せた。
「要するにそのジェネラルロックとやらを見つけろって事?」
「ジェネシスロック」
あたしが言い終わると同時に彼はすかさず訂正した。
「宇宙なんて行けるものではないと思って検証は諦めていたんだ。だが、ラヴィリンソスで働く友人に月の話を聞いてね。だが、あいにく僕は文系でね」
では彼から見て、あたし達は一体何系に見えてるというのか。
月の表面は乾燥していてきめの細かい砂地だった。その地面が涙の入江と呼ばれるお城のような館がある丘から、クレーターのようになった窪みの中心に向かってなだらかに何キロか下って行っている。その向かう先、窪みの中心地点には以前ゾディアークが封じられていたという大穴が開いている。
「見つけるだけでは足りないんだ」
斜面を下りながら彼は言った。
「奴を倒して何でもいい、戦利品が欲しい。戦利品を持ち帰れば通説は書き換えられ、学会は騒然となる。」
その時、彼の目の前の砂が地下から湧き上がる様にして山になった。山の天辺にどんどん砂が沸き上がり、みるみる大きくなっていく。
「出たっ、出たー!」
彼は子供のようにはしゃいだ声を上げながら斜面をあたしたちの方に駆け上がってくると、あたし達の後に陣取った。
「僕が正しかった、正しかったんだ。さぁ、ここからは君たちの仕事だ!」
そう言うと更に斜面を登り距離を取った。
「はいはい…」
あたしと相方ははそれぞれ武器をとって備えた。
その時後ろで彼がエーテル測定器を覗き込んで叫んだ。
「何故だ!なんで反応しないんだ?何故?」
測定器を振ったり叩いたりして彼は取り乱していた。どうやら彼の仮説とは違い、こいつはエーテルに当てられてゴーレム化したのではないらしい。何か別の力が働いているんだろう。
だが、現れた魔物を目の前にいつまでも崩れ落ち膝をついて取り乱す彼に構っている訳にはいかない。あたしと相方は彼に背を向け魔物の出方を量った。